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なぜカラオケ番組出身の歌手が売れないのか

近頃、カラオケの得点を競いバラエティ番組が人気で、「THEカラオケバトル」、「下克上カラオケサバイバル」、終了した「関ジャニーの仕分け」などたくさんあります。

その背景には、カラオケの普及と採点システムの日々の進化がありました。カラオケはもうすっかり「国民的」ですが、採点システムはまたそれほど浸透していないのが現状でした。しかし、最近では「飛躍的」に変化が起きています。それは「高い点数をとれる人は歌がうまい」と断言してもよいレベルにまで進化したことです。

素人だけでなく、多くのプロ歌手やプロのたまごまでもがカラオケで自慢の歌唱力を披露し、ブレイクや再ブレイクのきっかけとなることが多いです。

それはそれで結構なことですが、今回はこの現象が「歌手を潰す」がテーマですので、ちょっと悪口を言っちゃいます。

歌姫 May J

ディズニー映画「アナと雪の女王」の主題歌を担当したMay Jさん、彼女は歌がとっても上手なことに何の異議もありません。それより、あの美しい容姿に加え、あの歌声をも与えてしまうとは、神様のいたずらでしょうか。

彼女が有名になったきっかけは終了したテレビ朝日の番組「関ジャニーの仕分け」でした、この番組ではカラオケの得点を競う勝ち抜きシステムで、大変な人気を獲得していました。その中でもMay Jさんが絶対的エースで、番組が彼女のためにあったと言ってもいいほど!?

ではなぜMay Jさんの話をしたかといいますと、彼女はあの「Let it go」以後、ヒット曲がないからです。「それでいいじゃないか」と言われそうですが、そうです、その通りです。そうなりたくてもなれない人が山ほどいます。

しかし、本人は決して満足していなく、きっと自分のオリジナル曲を持ち、それをヒットさせたいはずです。これが今回のテーマの核心です。

彼女自身でもいろいろな「批判」に悩まされていました、たとえば本編中の主役の歌に比べ「心に響かない」。実はこれがカラオケで有名になったための大きな代償です。いや、副作用と言ったほうが適切かもしれません。

歌の表現力とカラオケのうまさとは別物

May Jさんはそれまでに機械を相手に練習を繰り返し、高い点数を出すための研究を繰り返していました。これが身に染みるほど完全となる「芸」が完成されました。クセと同じで自分では気づかないし、気づいたとしてもそう簡単には直せないのです。

これまでにカラオケ技術は大変な進化を遂げたが、やはり人間同士にしか伝わらない感情やら感性やらを理解するまでにはまだまだほど遠いのです。どうしても音程を中心に、正確さを求めてしまいます。加点システムに関しては無駄にテクニック(しゃくり、フォール、こぶし)を入れまくる人が中にいて、曲の原型がなくなるほど。

違う番組でですが、100点を取った人がいました。どんなんなんだろうと聴きたいかもしれませんが、僕の見解では大した歌声ではありませんでした。「100点をとった」と思って聴いたらきっと後悔します。選曲では歌いやすい音程の安定した曲を選び、無駄に「揺らぎ」など入れたりしていました。もちろん、個人的に恨みがあるわけではありません、100点をとったというのはすごいことですよ。

つまり、カラオケで高得点を出したいのであれば、個性を殺す必要があります。歌手や歌手を目指す人にとっては致命傷でございます。これがMay Jさんの「悩み」の根源ではないでしょうか。

音楽業界で成功するには

歌のものまねで有名な荒牧陽子さんや青木隆治さん、不思議に思ったことがありませんか、あんなに歌がうまいのになぜ歌手にならないのか。実はこの二人、歌手を目指していた過去があります。しかし、夢に破れ、仕方なく、ものまねに転身したのです。

歌のものまねを見ていると分かりやすいのですが、歌手ひとりひとりの歌声に、非常に強いクセがあります。実はこのクセが個性なのです。荒牧陽子さんと青木隆治さんの本当の歌声にはこのクセが欠けたのです。

極端な話、アイドルなどに音痴もいます、それでも売れているのはこの「音痴」が個性となっている、、、わけではなく、現代の音楽業界が複雑化したからです。

複雑化というのは、たとえば歌だけで売れるのは大変難しく、付加価値つまりストーリー性、人物像、人間性、ファッション性、映像などなどもが求められる時代となりました。つまり、うまければ、歌手になれる時代ではない。ないと思いますが、「本物」もが埋もれるほどです。

これは仕方のないことではないかと思っています。作曲というのは、無限の音符の組み合わせの中から、人間が聞いて気持ちいいという組み合わせだけを抽出する作業です。つまり、無限に作れるわけではありません、何百年前からのクラシック音楽から現代音楽にまで膨大な数の曲が生まれています、ほとんどのパターンがもうすでに作られています。

正直なところ、全く新しい曲は現代音楽には存在しない、どれもクラシックあるいは他の曲の一節と重なっているような気がします。パクリとは言っていません。

そのため、歌えないアイドル、かっこいいプロモーションビデオ、ヴィジュアルバンド、ゴースト作曲、カバー曲、本業が歌手じゃない有名人のCDデビューなどなどが出現するのです。

そういう意味では、「カラオケがうまい歌手」が存在してもいいのでは、と思うこともあります。しかし、そうはいきませんでした、なぜなら、機械には個性がないからです。

ちなみに、カラオケ採点の攻略法を紹介します

まず、選曲。リズムが簡単な曲、音程の高低が激しくない曲、短い曲、テンポが遅い曲などを選ぶといいらしい。

高得点が出やすい曲(たくさんあるのでごく一部です)。「スピッツ:ホタル」「井上陽水:少年時代」「GLAY:春を愛する人」「SPEED:WHITE LOVE」「ジュディマリ:クラッシク」「華原朋美:I’m proud」「童謡」など

そして、テクニック。採点の基準は「リズム」と「音程」らしく、それを考慮した結果だそうです♪

「決して感情をこめてはいけない」「歌の1番が終わった時点で演奏中止」「マイクに口を近づけ過ぎない」「楽譜に忠実」「しゃくり、フォール、こぶしを入れる」「音の開始・終了を間違えない」「カラオケのミュージックとマイクの音量、エコーのかかり具合を上手く調節する」「ビブラートは深くゆらせばとりあえず検知されやすいので、どんな場面でもとりあえずビブラートをかけまくります」

「アーティスト「Gackt」のような深くゆらすタイプがお手本らしい」「歌手になった気分でなく、音楽の先生の気分だとOKかも♪」「声の大きさ」「マイクをメロディのときは遠くにサビのときは口のそばにこれをする」「バラードを歌うメロディとサビのとき、声の大きさがかなり違うらしい」「強弱をつけると高得点が取りやすいらしい」

「フルコーラスするよりは採点可能な箇所で演奏停止した方が高得点になりやすい」「全体的に音楽のボリュームを落とす」「マイクを真っすぐ持つ(声を正確に拾うように、マイクの上部分は持たない)」「エコーやリバーブを切る」

これでは歌手になるところが、ぜんぜん違う道を進んでしまうように思えます!

これからのカラオケと人工知能

カラオケは日本で生まれ、世界に愛されるまでに成長しました。その影には技術者たちが努力を惜しまずに頑張ってきたからです。すばらしいことです。

しかし、人間と同じにように「感情」や「個性」をも評価できるようになるまでには、まだまだほど遠い道のりが待っています。これは技術者たちの問題ではなく、社会全体の基礎レベルが低いからです。

感情を理解するには、機械自身も感情を持たないといけません、つまり完全な人工知能が必要です。今現在の技術レベルでは人工知能は不可能です。

アメリカでは人工知能について、かなり激しい議論が広げられています。人工知能が人類を滅ぼすのでは!と。とにかく、カラオケはそれまでに人間のように採点することはありません。

個人的見解ですが、人間を超える人工知能はこれからも不可能だと考えています。その根拠とは、地球の何十億年の自然淘汰を経て、できたのがたんぱく質の人間で、鉄のコンピュータではなかったからです。自惚れてはいけません、人類はまた0から何かを作り出したことはたっだの一度もありません。すべてが「大自然」の模倣や再利用です。